粛々と収穫と作業が行われる一方で、オモニ(お母さん)が用意したおかずをつまみに、その様子を横目で確認しながら、明るく陽気にマッコリを飲み騒ぐアボジ達(お父さん)の姿が印象的。 6年根の収穫は家族、ご近所、また近隣の契約農家も加わり、皆が総出で手伝うのが特徴です。「人々が黙々と働いたり、はしゃいだり。 6年間本当に手塩にかけて育てた自分の子供を、世に送り出す親のような心境なのですね」と小林さん。土を作るころから始まり、種を蒔き、6年間育て、やっと収穫をする日がやってきたのです。 「今日という日に感謝して、皆でお祝いをしながら1年に1度この時を楽しみます」とチェさん。「苦労も喜びも、分かち合う。まるで収穫祭ですね」と小林さんは応じます。
韓国には食口(シック)という言葉があります。これは「同じ物を仲良く食べれば、血縁関係でなくても家族」という意味で、日本でいうところの「同じ釜の飯を食う」と思えば良いでしょう。 この日、小林さんとチェさんは食口になりました。オモニ手作りのキムチ、チャプチェやコムタンスープを頬ばりながら、小林さんは、収穫に対する熱い思いや正官庄の契約農家の責任の厳しさについて話を聞きました。
チェさんから聞く6年根の耕作の難しさ
「高麗人参の生育は、とにかく自然環境に大変左右されます。人が努力で出来ることは限界があるのですが、“作物は主人の足音を聞いて育つ”という通り、昼夜、雨風を問わず、頻繁に畑に出向き、気候や周囲の環境に細かく気を配らなければなりません」。 「ここで1等級、2等級と思われる6年根を収穫しても、加工する段階で光に透かし中の組織がしっかりしているかどうかなど、最終的にふるいにかけられ、選び抜かれてはじめて1級品、2級品と区別されます」とチェさん。 そして、6年根の土の養分を吸い尽くした畑では、次の耕作は難しく、また新しい土壌を求めて土作りから始めるのだそうです。
「高麗人参は連作障害を受けやすい作物で、同じ場所で再び耕作するのは難しく、水田や他の作物に代替されます。重金属、有害物質…例えば工場、畜舎などを避け、土壌自体が汚染されていない清浄な地域のみ契約が可能です。 1、2次と土壌チェックがあり、合格になって始めて高麗人参の種を蒔くことができますが、その後も土壌チェックがあり、安定的な品質を保持するための徹底した管理と計7回の検査に合格して始めて正官庄に納めることが出来るのです。それほど、正官庄が要求する土壌の要件は厳しいのです」。
その話を聞いた小林さんは、「正官庄の高麗人参が、より深く信用できるようになりましたね。日本から私たちが来た、ということで、ものすごく歓迎してくれて、言葉はわからないのですが、大変さの末にある収穫の喜びが伝わってくる気がしました。 そのかたわらで、大変な思いをして育てあげた6年根が、土の中から出てくる瞬間の不安、ドキドキ、安心、寂しさなど、私たちには測りしれない様々な感情を、皆さんが抱いているのだなと感じて。 ドラマテックな光景に出会うことができて、本当にこの貴重な収穫時期を体験することができて良かったですね」。小林さん、皆さんとの別れに、一抹の寂しさを覚えながら、次の行き先へと向かいます。
町会長のチョさんと、採れたての6年根を丸かじり!「ごぼうのような味ですね」と小林さん。農家の皆さんは、生の6年根をスライスして蜂蜜につけて食べるのだとか。「人々が活力を持って生活をできるという原点に、高麗人参はやはり欠かせないと実感しました」。